太陽光パネルの撤去作業は、専門的な知識と経験がなければ絶対に行うことができません。
感電や高所作業による事故、そして不適切な処理による環境汚染リスクが伴うからです。
この記事では、プロの業者が行う撤去作業の具体的な流れを詳細に解説します。
この手順を理解することで、なぜDIYが危険なのか、そして適正な業者を選ぶ際にどこをチェックすべきかが明確になります。
撤去作業前の「入念な準備」と「絶縁」の詳細
プロの業者にとって、最も重要なのは作業に入る前の準備、特に発電を完全に停止させるための絶縁作業です。
絶縁作業の詳細:電気的なリスクの排除(重要)
太陽光パネルは光が当たっている限り発電を続けるため、撤去前に電流を完全に遮断する必要があります。
残留電圧の確認: 遮断作業後も、配線や回路に電気が残っている可能性があります。プロの作業員は絶縁抵抗測定(メガ測定)を行い、発電が完全に止まり、感電リスクがないことを数値で確認します。この確認を怠る業者は避けるべきです。
パワーコンディショナー(パワコン)の停止: まず、住宅内に設置されているパワコンの運転を停止させます。これは、発電した電気を家庭で使用できる交流(AC)に変換する機器です。
交流(AC)側および直流(DC)側の回路遮断: 最初にパワコンの手前で交流(AC)側を遮断します。続いて、パワコンとパネルをつなぐ直流(DC)側の回路を遮断します。直流は高電圧のため、専用の絶縁工具と知識が必要です。
足場設置と「安全管理」の法的側面
高所作業では、安全管理が法律で義務付けられています。
- 足場設置の基準: 作業員が安全に作業できるよう、屋根全体を囲むように足場を設置します。労働安全衛生法により、高さ2m以上の場所での作業には原則として足場設置が義務付けられています。
- 作業員の資格要件: 撤去作業の際は、電気的な作業を行うために**「電気工事士」の資格が必要です。また、高所作業や機械の取り扱いに慣れた「太陽光発電設備設置工事の経験者」**がチームに参加している必要があります。
- 立ち入り禁止措置: 作業エリア周辺にはロープや看板を設置し、一般人(居住者)の立ち入りを禁止することで、パネル落下などによる事故を防ぎます。
パネルと配線の「慎重な取り外し」と屋根の保全
準備が整ったら、パネル本体の撤去に移ります。ここでも感電リスクと雨漏りリスクに最大の注意が払われます。
パネルと配線の高度な処理
- 架台からの外し方: パネル本体は、屋根に固定された架台(マウント)にボルトやクランプといった固定金具で取り付けられています。プロの業者は、屋根材を傷つけないよう、これらの金具を一つひとつ丁寧に緩めてパネルを外します。
- 配線処理の危険性: パネル同士をつなぐ配線は、発電停止後も高電圧の残留があるため、非常に危険です。特にパネルが直列で接続されている場合(直列回路)、電圧が高まります。専用のMC4コネクタ分離工具を使用し、配線を切断・絶縁処理を行います。この工具がない業者は危険です。
- 架台(マウント)とケーブルラックの撤去: パネルを外した後、屋根に固定されていた架台や、配線を整理していたケーブルラックも全て撤去します。
屋根材の「防水処理」(コーキング)の重要性
架台を撤去した後、最も重要なのが雨漏り対策です。
この**屋根材の防水処理(コーキング)**を丁寧に行うかどうかで、数年後の雨漏りリスクが大きく変わります。この工程を省略しない業者を選ぶことが、個人オーナーにとって最も重要です。
架台を固定するために屋根に開けたアンカーボルトの穴を、防水性の高い専用のコーキング材や防水キャップを使って確実に埋めます。
**「適正な業者を選ぶポイント」として、「賢く費用を抑える!太陽光パネルの廃棄・リサイクル費用の見積もり完全ガイド」**の記事をここで参照すると非常に効果的です。
運搬から処分までの「適正な管理」と「法規制」
パネルが屋根から下ろされた後、最終処分までの流れが環境保護と法律順守の鍵となります。
法規制:太陽光パネルは「産業廃棄物」です
- 太陽光パネルは、一般家庭から排出されても、法的には**「産業廃棄物」**として扱われます。したがって、家庭ごみとして捨てることはできません。
- 適正な処理を証明するため、撤去業者はマニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付が義務付けられています。このマニフェストにより、パネルがどこからどこへ運ばれ、最終的にどのように処理されたかが記録されます。業者がマニフェストを発行できるかを確認してください。
適正な処理業者の選定基準
- 運搬を行う業者は「産業廃棄物収集運搬業」、処分を行う施設は「中間処理業」の許可番号を、都道府県または政令指定都市から取得している必要があります。
- 許可を持たない違法な業者に依頼すると、不法投棄のリスクがあり、最終的にパネルの所有者(あなた)が責任を問われる可能性もあるため、業者の許可証の提示を求めましょう。
リサイクルの流れ:環境意識の高い処分
特にガラスやアルミは高いリサイクル率を誇ります。環境省は、太陽光パネルのリサイクル率の目標を掲げており、資源の有効活用が進められています。環境保護に貢献するためにも、リサイクル工程を公開している業者や、高いリサイクル率を謳う業者を選ぶことが推奨されます。
中間処理施設に運ばれたパネルは、高度な技術でガラス、アルミ、シリコン、銅線などの資源に分別されます。
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